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問題を抱える子どもたち

自然体験活動
〜何が子供たちに必要か〜

著:ガキ大将・スクール 黛 徳男
上毛新聞「オピニオン21」(2005年3月4日)掲載

自然体験と一口に言っても、その種類や手法は大変多く、ひとまとめに論じることはできない。しかし、全国の民間団体が行っている自然体験事業は、大きく五種類に分けることができる。

(1) 野外教育プログラムを中心にしたもの
(2) 冒険プログラムを中心にしたもの
(3) 自然体験型環境教育プログラムを中心にしたもの
(4) 野遊び型のもの
(5) ノンプログラム形式のもの

これらの中から各団体のポリシーに合わせてプログラムを組み合わせ、それぞれの団体が独自の手法で自然体験事業を展開している。

ここ数年、こうした自然体験事業を専門に行う団体が全国的に急増しており、子供たちの自然体験活動のすそ野を広げるという意味では大変喜ばしいことなのだが、半面、多くの課題も浮上している。例えば、若い人たちが立ち上げる団体で行われる多くの事業は、「野外教育」や「冒険教育」「環境教育」であって、「自然体験活動」でない場合も多く見受けられる。

自然体験活動とは、自然の中で五感を働かせ、感性をはぐくみ、体験によって生きる力やさまざまな心の変容をもたらすものだといえる。そこには自然と人とのかかわり、自然の中での遊び、自然を通しての癒やしなど、人間の心に響く体験が非常に重要である。ところが、「教育」としての自然体験は、この「心に響く」ことが大変少なく、ややもすると押しつけや強要、誘導などの手法が当たり前のように用いられている。

一例として、初対面の参加者同士が打ち解け合い、仲良くさせるために行われる「アイスブレイキング」、プログラムの最後に行われる「振り返り」や「分かち合い(シェアリング)」などは、自然体験活動に参加する子供たちにとって、実に押しつけがましい行為に思えてならない。多数の団体や指導者が必要不可欠とするこれらの活動がなぜ必要なのか、私には理解できない。子供たちの感性や心のありようを考えれば、何が子供たちにとって大切で必要なのか、おのずと見えてくるのではないかと思うのだが。

ところで、本県の小中学校で行われている校外学習(林間学校や臨海学校、移動教室など)の在り方も、そろそろ全面的に見直す時期にきているような気がする。飯ごう炊飯、カレー作り、キャンプファイアー、ハイキング、カッター、レクリエーション、管理海水浴…。キャンプファイアーのときに天狗(てんぐ)の面と衣装を身に着けた教員が登場し、巻物を読み上げるなど、三十年前と同じことが今も繰り広げられているのは、全くもって信じがたい光景だ。

そこには、五感を働かせることも、感性を豊かにすることも、ましてや子供たちが心を揺さぶられる体験もない。それでいいのか。いや、それではいけない。学力低下の議論も大切だろう。だが、人間として本当に大切なものを忘れてはいないか。「子供を育てるなら群馬県」。立派なキャッチフレーズが、今日も泣いている気がしてならない。

以上のような変化は、参加した自然体験プログラムに、非日常性が色濃ければ濃いほど、冒険的な要素が多ければ多いほど、また、ノンプログラムであったり、参加期間が長期間であればあるほど強く表れるという共通した特性がある。

この時代にあって、自然体験活動は、まさに子供たちの「生きる力」をはぐくむ最も重要なアイテムであり、学校教育と対をなす教育活動(野外教育)なのである。こうしたことも踏まえて、本県が新たな教育行政を展開してゆくことを強く望むものである。

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