|
飯ごうは元々、軍事用の弁当箱として使われていた。旧日本軍の使っていた飯ごうには、「将校飯盒」と「下士兵飯盒」があり、将校飯盒は角形、下士兵飯盒が現在使われている湾曲した形だった。なぜ湾曲しているかというと、飯盒で飯を炊き、そのまま腰の弾帯(弾薬ケースやその他のものをつける丈夫なベルト)に付けて、移動中や戦闘中でも食べられるようにしていたのである。
|
|
登山をする人たちは、同じように飯ごうに飯を入れ山に持っていった。長い山歩きの場合には、途中で飯ごうを使って飯を炊き、そのまま弁当箱として使っていたのだ。特に、高い山の尾根筋を縦走する場合などは、限られた水しか使えない。そのため、飯ごうを洗うことができなかった。(これは軍隊でも同じ)そこから生まれたのが、炊きあがった飯ごうを逆さまにして、熱いうちに草や木の葉で、すすや吹きこぼれなどの汚れを擦り落とすことだったのである。そして汚れを擦り落とした後、そのままの状態で蒸らしていたのだ。
|
|
戦後、軍隊経験者や登山者達が、地域でキャンプの指導や飯ごう炊さんの指導を行った際、当然の事ながらこの手法が伝えられ、炊きあがったらひっくり返して飯ごうの汚れを落とし、そのままの状態で蒸らすことが広く伝わり、そうすることが当たり前になっていった。
|
|
ところが、時の流れの中で、いつの間にかこのひっくり返すことと蒸らすことがくっつき、本来の目的である、「飯ごうが熱いうちに汚れをこすり取る」部分が伝えられなくなってしまったのである。この結果、ボーイスカウトやキャンプ講習会、子供会キャンプなどでも、「飯ごうをひっくり返して蒸らす」事が常識としてまかり通るようになり、挙げ句の果てはひっくり返した飯ごうの底を棒で叩くなどという誤った方法が広められていった。
|
|
結論としては、おいしいご飯を食べたいと思うなら、ひっくり返さずに蒸らし、飯ごうの汚れを完全に落とすことを重要視して、ご飯の味を犠牲にするならひっくり返せばいいのである。
|
|